住宅ローン所帯持ち会社員がセミリタイア目指してみた

住宅ローンあり・所帯持ちの会社員がセミリタイアを目指します。ソーシャルレンディング・投資・倹約を中心として、IT関連・デジタル機器・B級食べ歩きなども雑多に書いていきます。

ソーシャルレンディング事業者「maneo」の財務健全性

湖南(こなん)です。

前回ではソーシャルレンディング事業者「クラウドバンク」の財務健全性について触れました。

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今回はソーシャルレンディング事業者の最大手「maneo」の財務健全性について触れてみたいと思います。

そもそも財務健全性の記事を書くきっかけとなりましたのは、とあるブログを見た際にmaneoの自己資本比率について触れられていたから、というものがあります。

要旨としましては「maneoの場合、匿名組合の預託金が多すぎて判断し辛い……」という記載を見た際に「うん?」と。

実際の所、ここは少しシンプルに考えてみた方がいいかと感じました。まずはmaneoの数字を見てみましょう。下記がmaneoの直近財務諸表です。(平成30年6月30日時点)

https://www.maneo.jp/common2/pdf/ir/2019_maneo_market_consolidated_1Q.pdf

maneoでは四半期ごとに連結決算を開示しています。過年度では単体決算も出していたのですが……今は連結決算のみ出している模様です。単体決算のみ出ているクラウドバンクとは逆パターンですね。

恐らくIPOを意識したものかとは思われるのですけれども……本題より外れますのでこれにつきましてはこれ以上考察はいたしません。

で、こちらが単純に連結の貸借対照表から算出した自己資本比率です。

【純資産】  1,799,796千円
【総資産】45,282,547千円
【自己資本比率】3.97%
※現預金7,718,570千円

え、自己資本比率3.97%って低いね、maneoって危険なの?と前回の記事を見ると感じてしまう人もいるでしょう。ただそうではありません。

クラウドバンクでは匿名組合の資金管理はクラウドバンク・フィナンシャルサービスというグループ会社が担っていました。そしてmaneoの場合は匿名組合出資金も併せて負債として連結で含んでいます。

この匿名組合出資金。銀行が扱う預金等でしたら、何か問題が起こると解約など取付騒ぎが起こるという懸念もありますが……ソーシャルレンディングにおけるファンドの場合は出資者は途中解約できないという縛りがありますし、そもそも顧客に対して資産価値が保証されたものでもありません。

よって、少し乱暴な考え方かもしれませんが、この匿名組合出資金の部分は除いて考えて良いかと思われます。そうしますとどうなるでしょうか。これで計算した値を仮に【算定用総資産】(以下【算定用】と記載)と呼称することにいたします。

【総資産】45,282,547千円-【匿名組合出資金】39,065,252千円
=【算定用】6,217,295千円

さらにこの算定用総資産で先程の自己資本比率を計算してみましょう。

【純資産】1,799,796千円
【算定用】6,217,295千円
【自己資本比率】28.9%
※現預金7,718,570千円

30%弱という自己資本比率、通常値になりました。かなり悪くない数値です。

ただ他の事業も展開している会社では同様の取り扱いを出来ない部分があります。また、TATERUのような中途解約を可能とする不動産型クラウドファンディングにおいても同様の取り扱いは出来なくなってきます。

ただ、少なくともソーシャルレンディング専業の会社では同じ見方をして差し支えないでしょう。なお、そもそも3.97%という元の数値も、銀行のような多額の顧客資金を取り扱う金融業でしたら、高くはないもののそこまで珍しくはない数値ではあります。

とここまでは悪くない話でした。ここからは問題点について挙げていきましょう。

maneoの場合は、グリーンインフラレンディング問題に端を発した提携会社の問題がアキレス腱となっています。

このグリーンインフラレンディング、そもそもが筋の良くないものでした。まずはWebで通常開示されているグリーンインフラレンディングの情報を見てみましょう。おそらく今年のゴタゴタで今年度の開示が出来ておらず、直近では2017年度3月期のものしかありません。

https://www.greeninfra.jp/common/pdf/statement/2017/2017_greeninfra_financial_statement.pdf

先のmaneoと同様の計算基準で出してみますと。

【純資産】120,718千円
【算定用】344,959千円
【自己資本比率】34.9%
※現預金208,757千円

ぱっと見て、これなら普通じゃない?……と思いますよね。ただこのグリーンインフラレンディングには株式会社JCサービスという親会社があります。以前に官報で出ましたこの会社の直近決算公告を見てみましょう。

f:id:katasumi9:20180917231226j:plain

決算公告ですと、現預金など細かな内訳は出ませんので分かる範囲のみで。

【純資産】     422,488千円
【総資産】16,331,305千円
【自己資本比率】2.58%

正直、一発アウトの水準でした。事業内容を見る限りでもソーシャルレンディング以外の貸金業を営む訳でもなく、ホールディングス的でもない実業会社……。

グリーンインフラレンディングとの関係性も不明瞭なので何とも言えない所はあるにしましても、自然な流れとして匿名組合の管理はグリーンインフラで担当していると考える以上、先程のような好意的解釈も出来ないでしょう。

この他にも常時12%を越えるという明らかに高すぎる利回りなど、敬遠すべき所はいくつかあったという形です。

実際に6月、このグリーンインフラレンディングは少なくとも10億円以上が募集時の説明と異なる目的に流用されたのを見過ごすなど、maneoも含めた管理体制に重大な不備があったとして大きな問題となるわけです。

当初私なんかも、グリーンインフラの問題なんてmaneoは巻き込まれた側でしょという感は正直あったのですけれども……第三者からはmaneoマーケットという同じガワで見えてしまっているという以上は、maneo募集でのファンド管理が上手く出来ていたとしても、そもそもとしてそことグリーンインフラレンディング直接経由のファンドで資金の取り扱いに差があってはいけないという判断が下された形です。

悪い言い方をしてしまいますとグレー段階、疑わしきは罰せずだったのが、当局へ問題が露呈してしまった以上、対策せざるを得なくなったと言いますか……。

この対策がmaneo側で明示されない限り第二・第三の問題が起こった場合、maneoマーケットそのものが根本的な機能不全に陥る可能性は否定出来ないわけで、maneoに対しては現在静観している状況です。

次回はTATERU、もしくはOwnersBookを取り上げる予定です。あるいはトラストレンディング辺りになるかもしれません。